こんにちは、くまです。
今回は映画レビューです。
1985年11月公開、伊丹十三監督第2作「タンポポ」の思い出です。
この映画は公開当時に封切館で観ました。
当時まだ闇市の雰囲気が残るJR立川駅南口から10分くらい歩いたところにあった「立川東宝」・・・みたいな名前の映画館でした。
伊丹十三氏は少しクセのある俳優として当時十分な知名度があった1984年に51歳で映画監督としてデビューしました。
その初監督作品「お葬式」はその年の映画賞を総なめにし、更にその3年後に第3作目として公開された「マルサの女」も大ヒットし、伊丹十三氏は映画監督としての名声を確固たるものとしました。
・・・それら2作品に挟まれた監督第2作が「タンポポ」です。
以前の記事「春木屋理論」で触れたとおり、1980年代半ば市中はラーメンブームで沸き返っていました。
そのブームが後押しして企画されたのかもしれませんが・・・この映画はそれら2作に比べてそれほどヒットしなかったように記憶しています。
簡単にストーリーをお話しすると、
タンクローリーの運転手、ゴロー(山崎努)とガン(渡辺謙)がふと立ち寄ったつぶれそうなラーメン店の店主タンポポ(宮本信子)に懇願され、その店を人気店にするべく修行を開始する・・・といった主題のストーリーを軸にして、白服の男(役所広司)を中心とする食に関する13のサイドストーリーが展開する・・・といった感じになります。
観た方にはわかると思いますが、西部劇「シェーン」を下敷きにしていますね。
・・・とにかく、第1作で大評判になったからこそできた我がままを伊丹監督が全部やり切ったのがこの映画のような気がします。
主題のラーメン店の話からサイドストーリーへのつながり方が、それまでの映画には無かった感覚で展開されます。
・・・例えば「ラーメン屋はまず体力作りからだ!」みたいな感じでゴローがタンポポにジョギングをさせているシーンで、あるホテルの前で立ち止まり「何やってんだ・・・俺」とゴローが自問自答するところを横切る会社のお偉方とそれを接待する会社員が、ホテル内のフレンチ料理店で食事をオーダーするシーンにつながる・・・というシーンがあります。
・・・主題とそれと関係ないシーンをコラージュさせる手法があまりに斬新過ぎて、
「お葬式」で大ヒットした監督の第2作目はどんなだろう?
と思って見に来た方々からはちょっとウケないだろうな・・・と私も当時思いました。
この映画を観に行った私くまの目的も、もちろん同じ・・・というわけだけでなく、実は出演者の一人であるこの方が目当てだったのです。
・・・わかりますかね?
これもサイドストーリーなんですけれど、白服の男(役所広司)に自らの手から生牡蠣を食べさせている海女さんは若き日の洞口依子さんです。
以前の記事↓でも書かせていただいたんですが、
当時の私くまは洞口依子さんの大ファンでした。
・・・・・・・・すいません、それはどうでもいい話でして。
とにかくこの映画、様々なこだわりを捨てられない伊丹十三監督が「お葬式」の大ヒットのご褒美として好き勝手やらせまくっててもらった感が壮絶に強い映画です。
・・・小さな役でいろんな方が出演しています。
松本明子・藤田敏八・加藤賢崇・横山あきお・新井素子(作家のあの方です。クレジットされてませんがチャーハンを作るお母さんを看取る看護婦さん役です)・・・。
観終わって劇場を出るとき、とにかく幸せな感情に満たされていた思い出があります(映画音楽のテーマとなっていたリストの「レ・プレリュード」も印象的ですよ)。
その後。この映画は日本国内より海外、特にフランスあたりで高い評価を受けていました。
かつてサムライジャパンを指揮したフィリップ・トルシエ監督の通訳として露出度の高かったフローラン・ダバディさんがその筆頭ですね。
こんな本まで出版されています。
公開当時より時を経るごとに評価が増していく「タンポポ」、これは一見の価値があります。
ぜひともおなかをすかせてご覧ください・・・。
本日もありがとうございました!